元ピンク・フロイドのシド・バレット、逝去

 ピンク・フロイドの結成メンバーであり、ソロ・アーティストとしても『帽子は笑う…不気味に』『その名はバレット』という傑作を発表していたシド・バレットが7月7日、自宅にて死去しました。享年60歳。死因は糖尿病に起因する合併症と言われています。

 バレットは、画家を目指し美術学校に在籍中に、旧友のロジャー・ウォーターズと彼の建築学校の同級生であったリチャード・ライト、ニック・メイスンとともにピンク・フロイドを結成。1967年に発表された1stアルバム『夜明けの口笛吹き』は、後のフロイドのアルバムとは異なり、ポップなサイケデリック・ロックの極彩色絵巻。その世界観はまさにバレットの心象風景そのもので、彼が当時、バンドの中心人物であり、バンドをひっぱっていたのは明らか。

 翌年の1968年にデヴィッド・ギルモアが加入、『神秘』を発表するも、バレットは精神崩壊でほぼ解雇という状態で脱退。ウォーターズはそのことをいつまでも気にかけ、バレットをテーマに「あなたがここにいてほしい」や「クレイジー・ダイアモンド」(共に『炎〜あなたがここにいてほしい』収録)、『ザ・ウォール』などの名作を創り上げます。また昨年行なわれた“Live 8”での再結成ライヴ(全盛期メンバー4人で!)でも、バレットに捧げる、として「あなたが〜」を演奏。何年もの間、その行方は謎でしたが、時々病院に入院していた一方、ほとんどは母親と静かな生活を送っていたようです。

 今回の訃報に際し、ピンク・フロイドは「バンドはシド・バレットの死について知り、非常に動揺しており、悲しんでいる」というコメントを発表。またデヴィッド・ボウイも自身のHPに「(悲しすぎて)どれだけ悲しいか伝えられない」とのコメントを寄せています。

 この上ない美貌の下に潜む繊細すぎるほどに脆く危うい弱さと、底知れぬ孤独、優しさ……。そんな彼のすべてを映し出すような声も音楽も、いつまでも私たちの心に残り続けることでしょう。本当に残念です。心よりのご冥福をお祈りいたします。(CDジャーナル)

私自身はフロイドもバレットもほとんど聴いていないので、思い入れというのはそれほどないのですが、バレットの人生には非常にせつないものを感じます。

Madcap Laughs

Madcap Laughs

有名なエピソードがあって、精神異常をきたして脱退したシドを歌った「クレイジー・ダイヤモンド」をフロイドが録音中、スタジオに一人の男が入ってきた。メンバーは誰だかわからなかったが、それが実はシドだった。解雇以来の再会で、頭髪は禿げ、肥満体になっており、あの美男子だったシドの面影はまったくない状態だった。シドと気づいたメンバーは思わず涙を流したという。
Opel

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謹んでご冥福をお祈りいたします。