81/8/15-10/31の全米No.1&クリストファー・クロスの思い出

Endless Love (1981 Film)

Endless Love (1981 Film)

8月15日から9週連続1位。年間チャート2位。ダイアナ・ロスライオネル・リッチーのデュエットという話題性もあってか、すさまじいチャート記録ですが、そんなにいい曲かなぁ。
Christopher Cross

Christopher Cross

10月17日から3週連続1位はクリストファー・クロスの「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」。映画「アーサー」の主題歌で、当時新人で飛ぶ鳥を落とす勢いでアルバム「南から来た男」が売れていたときに出た新曲でした。
以前にどこかで書いた記憶がありますが、クリストファー・クロスには個人的な思い出があります。えー話ですよ。


昔、デパートの食料品売場に勤めていた頃、コーヒー豆売場に外人がいて、何言ってるかわからないとのことで、「若干」英語ができる私が呼び出されました。
その外人は、「デカフェが欲しい」と繰り返してました。「デカフェって何?」と思った私は売場の店員に「デカフェって売ってる?」と聞くと、「そんなの売っていない」とのこと。
で、よくよく考えてみると「あ、ひょっとしてカフェインレスのことか?」と思い、外人に聞いてみました。「だず・でかふぇ・みーん・のー・かふぇいん」とかなんとか。たぶん「カフェインレス」って和製英語だと思ったのでそう聞いてみたら、外人は「イエース」。あー良かったと思い、店員にその旨を伝えて無事買い物終了。
この外人とやりとりしているうちに、「この人、誰かに似てるなー」とは思ってました。薄い頭髪、つつきたくなるようなほっぺ、細い目、やや肥満気味な体型。「あ、クリストファー・クロスでは?」。何しろ彼のアルバムは自分のルックスに自信がないためか(失礼)、フラミンゴばかりジャケットを飾っていたので、あまり顔写真を見たことがなかったんです。加えてまだ当時20代前半の私は彼のようなAOR系にはちっとも興味がなく、彼の曲もタイトルしか知らなかったくらい。
それはさておき、買い物を終えた彼に勇気をふるって聞いてみました。


「あー・ゆー・みすたぁ・くりすとふぁー・くろす?」


するとその外人はニヤッと笑って「イエーーース」。


当時はもうヒットチャートから遠ざかっていて、あまり気づく人もいなかったのかもしれません。何だかうれしそうでした(w。
私は「今日ライヴなのか?」と聞いたら、彼はまたうれしそうに「そうだ、ブルーノートで今夜やるんだよ」と答えてくれました。そして彼は続けて「君は今夜ヒマか?」と聞いてきました。一瞬何かなと思いつつ「イエス」と答えると、彼はおもむろに紙を取り出して私に手渡し、「ここに君の名前を書け。それを今夜ブルーノートの入口で見せればタダで観れるよ」と言ってくれたのです。


「り、りありぃ??」


全然曲は知らないけれど、タダでグラミー賞歌手のパフォーマンスが観れる! 私は「ラッキー」と思い、早速名前を書きました。すると彼は続けてこう言いました。


「君は彼女はいないのかい? いい人がいるんなら連れておいでよ。ここに彼女の名前も書いといて」


と言ってくれるではないですか! なんていい人だ! というわけで、彼女(いまのかみさん)の名前を書いて渡しました。
そして閉店後、ブルーノートへ。もちろんかみさんはクリストファー・クロスなんぞ知るわけがない。でもまあタダなら、と言って一緒に来ました。正直、本当に入れるのかなぁと思いつつ、入口でスタッフに名前を言うと、さっき書いた紙をスタッフが持っていて「どうぞ」と。ほっとしました。
さすがはクリストファー・クロス知名度はさすがでブルーノートは狭いとはいえほぼ満席。でもタダでわざわざ招待してくれたわけで、本当にいい人でしたね。
1時間弱ほどのショーで、ほとんど知っている曲はありませんでしたが、その中で唯一覚えていたのが実はこの曲、「ニューヨーク・シティ・セレナーデ」でした。もうお手本のような極上のAORバラードで、作曲は彼とキャロル・ベイヤー・セイガーピーター・アレンバート・バカラックというとんでもない組み合わせ(というのは後になって知った)。というわけで個人的にこの曲はスペシャルなのですよ。


さて、ショーが終わると彼の控え室へ行きました(ブルーノートはこれがあるから良かった)。ソファでくつろいでいる彼に感謝を述べると、彼は「今夜は楽しめたかい?」。もちろん「イエース」と答えると、彼はにっこりと笑って「それは良かった。こちらが彼女かい? 仲良くやれよ」みたいなことを言ってくれました。
まあいまだに彼の作品はべスト盤しか持っていませんが、彼の声や人柄と同様、あったかさを感じてしまいますね。本当に本当にいい人だったなぁ。