ヨン様ブームを読む

おおっ、なんかかっこいいタイトルだ(笑)。さて、様々な余韻を残して去っていったヨン様ことペ・ヨンジュン。いわゆる韓流ブーム、今回の来日騒動を、経営学的に分析してみました。


ま、私も一応コンサルの端くれですので(爆)。心情的には韓流ブームなんてちっとも興味はないですし、ヨン様という呼び方も嫌いだし(杉良太郎が「杉様」ならやはり「ペ様」が本当だろ)、年甲斐もなくキャーキャー言うおばさま連中にはムカつくわけですが。


まず「韓流ブーム」ってマスコミによって作られたブームじゃん、という批判について。


というか、作られない自然発生的なブームなんてあり得ないでしょう。仕掛けるからこそブーム。そういう意味ではNHKがご立派だったとしかいいようがない。NHKは実はなかなか目のつけどころが昔から上手いところ(と下手なところ)があって、ちょっと前なら「Mr.ビーン」や「ER」、「ホワイトハウス」といった外国ドラマをヒットさせたように日本では発想的にあまり作られないタイプのドラマのネタ発掘は上手い。韓流ブームが、もともとそういうNHKの視点の鋭さに起因する点はやはりあったでしょう。ただここまでの盛り上がりにはやはり「韓国」という国の持つイメージや、同じアジアというポイントがあったことも事実(ここではテーマの範囲外)。
それはさておき、「ブームは『仕掛ける』ものだし、『作られる』もの。そしてそこには必ずマスコミ、ミニコミ、ネットなどのコミュニケーションツールは介在する」もの。よってこの批判は当たらない。もちろん大宅壮一の「一億総白痴化」じゃないですが悪影響はあります(これもテーマからちと外れる)。少なくともブームといったものについては、経営学的にこれは当たり前の現象。


次に今回ヨン様見たさに怪我人が出たことに対する責任論について。


マスコミはおばちゃん・ホテル叩き(というより良質な高視聴率ソフトであるヨン様擁護)、ネットではヨン様・おばちゃん・マスコミ叩きのようです。おばちゃんが両方とも入ってるのには笑えますが(心情的に同感です)。


状況はヨン様がホテル・警察側の制止を押し切って、玄関から出ていったためにおばさんたちが将棋倒しになったという因果関係のようです。
分析すると、経営学的にはこうなるのかな?
つまり、ホテルとしては客であるヨン様の「家族(ファン)に会いたい」という希望を実現させるための手立てを最大限に取るべきでした。その努力なしに、単に危険回避で「正面からはダメです」の一点張りでは、そりゃヨン様ご一行も納得するまい。
ディズニーランドはCS経営の見本とされてますが、ここの発想も「リスク回避」ではなく「どうすれば実現できるか」の視点を重視しています。なぜか。リスク回避という場合のリスクとは、大抵の場合、企業側のエゴに過ぎない場合が多いから。これは結局顧客不満足をもたらす、という理屈です(CSがなぜ利益をもたらすかはめんどくさいから解説はパス)。
また、最初にホテル側を取り上げた理由は、彼らが対応可能であれば、ホテル・警察・ヨン様・おばちゃんたちの間でWin-Winの関係が実現できたからでもあります。もちろんホテルには安全管理の義務はありますし、他のお客さんとの利益相反も踏まえての判断は必要ですが、個々の顧客の希望に合わせることはビジネスとして道理です。
石ノ森章太郎氏の「HOTEL」で、ホテル内であたりかまわずお祈りを始めるイスラム系とおぼしき宿泊者たち(他のお客さんは気持ち悪がっていた)に対し、お祈りするためのスペースを彼らに提供したエピソードを思い出します。


で、熟慮検討の上、「ムリだ」となればそりゃ止めざるを得ません。しかしながらホテル側でできることはやった上なので、それからは責められることもないし説得力も増すでしょう。ここまでくれば、次にそれでも強行したヨン様ご一行の責任を問えることになります。
ところでなぜヨン様「ご一行」という書き方をしたか。それは次に責任の所在がマネジメントサイドにあるからです。ヨン様はタレントです。彼にとってのカスタマー(顧客)はおばさまたちです(本当に彼はうれしいのかなぁ?)。したがってヨン様のお仕事は彼女たちに会うこと。それによって顧客関係性(カスタマー・リレーション)を高めることは、マーケティング的にも理にかなっています。
しかしながらマネジメントサイドは違います。彼らのタスクはタレントの商品価値を高めることと同時に、タレントの管理にあります(安全管理・品質管理)。
あのホテルの状況で、事故発生というリスク(その後のタレントへの影響も含めて)を読めない彼らは脳なしと言われても仕方ないでしょう。タレントの言うとおりにだけするのならマネジャーは入りません。日テレのドキュメンタリーが昨夜放送されてましたが、画面だけを見ていると、彼らがほとんど機能していないことに気づきます(はっきりいってあの日本側マネジメントの担当者の態度には心底ハラワタが煮えくり返りました)。


さて、ここまでヨンで、いや読んでいただいて、「あのおばちゃんたちは悪くないの?」というご意見があるでしょう。いやごもっとも。また「わがまま通したペにも責任はあるだろ」というご意見も。
まあそうでしょうね。私もあそこまで頑ななヨン様には「タレント魂」というよりは違和感の方が(つまり「ホテル側の気持ちも汲んでやれよ」)あるんですが、あくまで経営学的に見ると、上のような説明になるんですね。少なくとも彼の周りの人々のあまりに行き当たりばったりの対応の方が問題になります。事実、その後の空港ではおとなしくヨン様は従ってるわけですし。少なくとも今回の事件では、かなり頑なだったとはいえ、まだヨン様は免責できるかと。あまりひどいと島田紳介のように自己責任がおっかぶされますが。
おばちゃんたちに関してはこれはもう「自己責任」の一言で片づけていいでしょう。ただ、これだけは言えます。相当タチの悪いファンですね。十代のジャニーズのおっかけや宝塚のおばちゃまファンの方が遥かに礼儀正しいし、常識を外れていない。もっともジャニーズも宝塚も歴史がありますから、ファンの間にもルールが慣習化するだけの時間があった、というだけかもしれませんが。


以上、経営学的にみた韓流ブームとヨン様騒動でした。
繰り返しますが、経営学的な見方なので(もっとも半分以上冗談ですがね)皆さんの心理からいえば物足りないでしょうし、反論もあるでしょう。そりゃしょうがないです笑)。
個人的には冒頭に述べたようにブームは興味がないどころか不愉快ですし、ペも好きじゃないし、おばはんたちは大概気持ち悪いと思ってるし、マスコミののぼせ加減も腹に据えかねます。でもその課題は経営学では扱えませんので、歴史学者フェミニズム学者、マスコミ学者(いるのかなぁ)にお任せしましょう。特にマスコミの倫理観には興味はありますね。


ちなみに一番納得した、ヨン様騒動のまっとうな見方は下記参照。ごもっともです。
http://d.hatena.ne.jp/kuri2/20041130


さて、本サイトは音楽サイト。今回の騒動があのビートルズを引き合いに出されることが多いようです。それについて私はどう考えたか?


「考える気すらしない」


これをどう解釈するかは皆さんにお任せします(苦笑)。