TOTO「アイソレーション」の思い出
たまたま2ちゃんねるの洋楽板を見ていたら、なぜかTOTOの「アイソレーション」のスレが。TOTOのアルバムの中でもかなりマイナーな部類に入るだけに違和感があった一方で、実は個人的には思い出の深いアルバムなので、ちょっとそれを書いてみようかと。
- アーティスト: Toto
- 出版社/メーカー: Columbia
- 発売日: 1988/05/20
- メディア: CD
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売れなかった。
前作までのヴォーカリスト、ボビー・キンボールが抜け、無名のシンガーであるファーギー・フレデクセン(元体操選手だったそうな)が加入したといった変化はあったものの、声質は似ているし、抜けのいい分ボビーより好きだったんですが、たぶん売れなかったのはそんなことではないと思いました。
アルバム全体としてはロック色が極めて濃く、スリリングな内容で決して悪くはありませんが、「聖なる剣」をイメージしていると見事に裏切られる内容といってもよいほど過激だったことは間違いありません。いずれにせよ、内容は悪くない。
思うに、セールス不振はシングルカットのミスとあのジャケットのせいではないかと。
まずシングルですが、「ストレンジャー・イン・タウン」が先行シングルとして出ました。今までにない曲調で、どちらかといえばダークなイメージで、はっきりいってシングル向きではないですし、アルバム全体を代表するような音でもありませんでした。案の定というか、待望のシングルであったはずにもかかわらずヒットチャートでは確かトップ20にも入らなかったように記憶しています。
続くシングルは「ホリーアンナ」。これはアルバム中もっともポップなナンバーで、私も大好きな曲ですが、アルバムの中では明らかに浮いた曲(だからかアルバム最後の曲でした)で、これで余計にアルバムのイメージが不明瞭になったような気がします。この曲もチャートの下位であっという間に消えました。
その後のシングルが出たかどうかは定かではありませんが、あったとすれば「ハウ・ダズ・イット・フィール」と「エンジェル・ドント・クライ」。PVが放映されてましたから、たぶんシングルだったのでしょう。記憶が定かではないのはチャートインしていないからだと思います。この2曲についていえば、前者は典型的なTOTO(というよりルカサー的な)バラッドで、前作に入っていても違和感はなし。後者はドライなロックナンバーですが、シングル向きとは思えない…。
このアルバムにはタイトル曲や「エンドレス」などシングル向きの曲もあったと思うのですが、なぜかそのあたりはカットせず。当時はあれだけシングルカットをしまくったブルース・スプリングスティーンの「ボーン・イン・ザ・USA」から「ノー・サレンダー」がカットされなかったのと同じくらい不思議に思ったものです。
それからやはりジャケットのひどさ。これは売れませんわ。次作「ファーレンハイト」からはかろうじて「アイル・ビー・オーバー・ユー」がヒットしますが、アルバムとしては今ひとつ散漫で、充実作はその次の「セブンス・ワン」まで待たなくてはなりませんでした。奇しくもこのアルバムと「聖なる剣」、そしてもう1枚名作としてあげられる1stのジャケットに共通して剣が描かれていたために、「TOTOは剣のジャケットが自信作」という根拠レスな噂も流れたものです。
私にとっては当時「聖なる剣」は未聴で、さかんに宣伝されているものだからこの「アイソレーション」がTOTO初体験に。そういう意味ではあまり彼らに先入観はなかったものの(特にロック色の強さに対する敬遠)、上記のような疑問は持ってましたね。でも初体験のアルバムはやはり思い入れも強く、いまだに彼らのアルバムの中ではよく聴く1枚ではあります。